SUSTAINABILITY
私たちイーオクトが考える「サスティナビリティ」とは、難しいことではなく、
誰もがただほんの少し、日々の暮らしを、消費行動を見直して、行動を変えること、進化すること。
第7回 Scandic Hotel
スカンディックホテルのサスティナブルビジネス(2)
ホテルの具体的な環境対策は?
スカンディックホテルの理念に基づいた具体的な環境対策活動を知るために、サスティナブル・ビジネス・マネージャーのインゲルさんの紹介で、現場であるScandic Järva Krog スカンディック・ヤーバ・クルーグホテルを訪れました。
そこでは、ホテル管理所長で、ホテルの環境と安全の責任者であるRichard Palmu(リチャード・パルム)氏が出迎えてくれました。
Scandic Järva Krogの環境と安全の責任者Richard Palmuさん
まず、彼のオフィスで、ホテルの全般的な環境の取り組みについて話を聞きました。
彼らの環境の目標の基準となっているのが、北欧委員会の*環境ラベル・スワンの基準でした。
そこで、スカンディック・ヤーバ・クルーグホテルがどれほどスワンの基準を満たしているのかについて説明をしてくれました。
スワンのラベルには、4つの要求項目があります。エネルギー、水、化学物質、そして廃棄物です。
これらの使用量は、毎日彼がチエックをし、本社に報告し統計が取られ、データとして再度彼のところに送り返されます。
そのデータによって、彼は前月と比べどう進展したのか、昨年と比べてどうなのか、などのモニターと分析ができるようになっています。
そして、結果が悪くなっているところは、原因を追及して改善を行っています。
1.エネルギー
電気に関しては、100%再生可能なエネルギーをVattenfall電力会社と契約して使っています。再生可能電力には、水力と風力とバイオマスがあります。
冷暖房は、Norrenergiエネルギー社から地域冷暖房というかたちで供給されています。
それらの熱源は、再生可能であるという認証のある(自然保護協会の環境ラベル鷹マーク)熱源です。例えば、木質バイオマス、海水の温度を使ったヒートポンプなどです。
省エネ対策としては、ホテルの照明に、ローエネルギーランプを使用。コンピューターも省エネ対策のあるものを購入しています。
また、余熱の再利用にも積極的に取り組み、近い将来、プールのお湯は余熱を利用して温められるようにする予定です。
部屋の温度は、自動的に、朝は少しあたたかくなり、夜中は低くなるように設定。快適さを保ちながら省エネを考えています。
2.水利用
ホテルの部屋の節水対策としては、節水の蛇口を手洗いとシャワーにつけています。
宿泊客1人一泊当たり普通のホテルだと226リットルの使用が平均だそうですが、193リットルで済みます。
スカンディックの水問題への関心は高く、国際的な*ストックホルムウォーター賞を創設しています。
また、数年前に、飲料水をボトルで輸送することは、水道の水質が良いスウェーデンでは無駄で、二酸化炭素を排出して地球温暖化問題に負荷を与えているという議論がありました。
スカンディックホテルは、早急にホテルのレストランや会議室に出す水は、全てホテルの水道水そのものか、その水に炭酸を入れてミネラルウォーターにする方法に切り替えました。
ボトルの水は買わない。レストランでミネラルウォーターを作って容器に入れ提供。
そして、有名な水泳選手のデザインした容器に入れて出すようにしています。その他、清掃に使う水の節約を考え、床のモッッピングは水を使わないマイクロファイバーモップを使っています。
スカンディックホテルでは、環境と利益は密着
スカンディックホテルでは、一般的にはCSR部長という肩書をサスティナブルビジネス・マネジャーに変えています。
それは、環境も、CSRも、慈善事業で取り組んでいるのではなく、しっかり事業の中に取り入れビジネスとして利益を上げていることを示しているのです。
3.化学物質
部屋のシャンプーも、清掃も、皿洗いの洗剤も全て、難分解性ではない、環境ラベルのついたものを使っています。
シーツやタオルの洗濯に関しては、ほぼ外部委託です。委託会社は、難分解性ではない環境に配慮した洗剤を使う洗濯方法を導入しています。
シーツ等の洗濯は委託。環境配慮洗剤を使用
部屋の清掃では、マイクロファイバークロスを使っています。2種類のクロスを用途によって使い分けしています。
スカンディックでは、連泊客にタオルを再使用してもらうように呼び掛けており、80%のお客さまが再使用しています。そうすることで、洗剤や水の使用量を減らすことができるからです。
また、ホテルの朝食で、コーヒー、チーズ、ジャム、穀類等、20種の食材をオーガニックのものに切り替えているのも化学物質への対策です。
4.廃棄物
スカンディック・ヤーバ・クルーグでは、廃棄物を分別した後に残るゴミの量は、宿泊客1人一泊で270グラムです。
96年には、1キロ近くあったのでかなりの削減ができています。その頃から、使い捨てのアメニティは廃止しています。そして、部屋ではお客さんが3種類に分けてゴミを出せるようにしています。
スカンディックには廃棄物分別システムがあり、22種に細かく分けられています。
たとえば、容器は無色、有色のガラス、缶詰め類、プラスチック、ボール箱、紙等の種類、その他、電気電子器具、ランプ、バッテリー、生ゴミなどに分別しています。
バックヤードでORWAKが活躍
バックヤードに行くとORWAKの圧縮減容機がありました。5070W(2連結ボックス)という機種で、片方には紙の容器、もう片方に缶類が入っていました。
93年から活躍しているORWAK
嵩(カサ)が低くなった缶類
リチャードさんが、実際に機械を運転して、その両方がどれくらい圧縮され嵩(カサ)が低くなるかを見せてくれました。簡単な操作で、驚くほど小さくなるのが分かりました。
バックヤードの様子
廃棄物保管倉庫に行くと、ORWAK機で圧縮してコンパクトになった段ボール箱や紙の箱が置いてありました。そして、リサイクル回収業者がピックアップにくるようになっています。
リチャードさんによると、スカンディックホテルは、環境活動を始めた頃からORWAKを導入し続けているとのことでした。ホテル規模によって、いろいろなタイプのORWAKの圧縮機を導入しているそうです。
廃棄物を分別して保管できる場所が充分にあるところは大きな機械を入れています。
スカンディックにとっては、ORWAK導入の大きなメリットは経済的メリットだとリチャードさんは語ってくれました。
紙の容器や、堅いプラスチックの容器、メタルの缶詰の缶などを圧縮して、コンパクトにすることによって、運搬回数が減り、その分コストを削減できるからです。
運搬による二酸化炭素の排出量を削減できるため、環境メリットも大きく、大活躍しているとのことでした。
生ゴミ
生ゴミは、キッチンで分別して、冷却ルームで保管しています。生ゴミも含め、全ての廃棄物は、SITA廃棄物処理会社が回収に来ます。
生ゴミは、現在はコンポストされていますが、ストックホルムがこれからバイオガスの生産に力を入れるようになるとバイオガスの原料にも使われるようになります。
油は、別に回収され、これは石鹸などにリサイクルされているそうです。
まとめ
リチャードさんは、ホテルのバックヤードから部屋、会議室、レストラン、レセプションと全てを案内してくれました。
最後に、レセプションの売店も案内してくれました。スカンディックホテルは、ルームサービスは廃止し、その代わりに、お客さんが24時間いつでもコーヒーやサンドイッチ、その他の日用品を買えるようにしています。
その売店のコーヒーは、オーガニックでフェアトレードのものでした。また、バナナもフェアトレードのものです。
環境と社会性の両方に配慮という事例のもう一つは部屋のキーでした。部屋のキーは、木製です。そして、目の見えないお客さんが正しい方向に挿入できるように片方にカットがしてあります。
スカンディックの対策は、その他、遺伝子組み換えの食品を使わない、東南アジアのマングローブで養殖されているエビは使わないなど、ここで紹介しきれないほどあります。
スカンディックホテルの宿泊客が、一般家庭で生活するより持続可能だと彼らが認めてくれるように努力しています。93年から環境分野で惜しみない努力を続けてきたベテラン選手だというのが分かります。
私は、毎回、スカンディックホテルの視察のたびに気付くのは、キッチンにしろ、部屋の清掃にしろ、現場で働いている人たちひとりひとりが、都度指示されなくともしっかり環境に配慮した対策に参画していることです。
リチャードさんが、1人1人に声をかけていましたが、皆が持続可能な発展に自分の現場で貢献していることを意識し、誇りに思っていることを感じました。彼も、現場の従業員が自主的にしっかり対策をしていることに満足しています。
全従業員がビジョンを共有し、それぞれの持ち場で貢献しようとしている。それが、スカンディックホテルを、業界のサスティナビリティのトップランナーにしているのだと思います。
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