SUSTAINABILITY

私たちイーオクトが考える「サスティナビリティ」とは、難しいことではなく、
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COLUMN :第11回(2011.11.27)

第11回 日本が忘れている再生可能なエネルギー

バイオガスの可能性

 

再生可能なエネルギーへのシフトの機運

3.11の東日本大震災と福島原発事故後、リスクの高い原発から脱却して再生可能なエネルギーへ早くシフトしようという機運が日本に高まっています。そして今回、原発や火力発電のように1箇所で集中的に大量のエネルギーを生産して遠方の消費者に送るという方法が災害に弱いことも分かりました。それゆえ、小規模で地産地消型のエネルギーが注目を浴びています。その典型的な例が太陽光発電と風力発電です。その他に、小規模の水力発電や、地熱や波力発電なども取り上げられています。ところが、日本には豊富に資源があり、開発の可能性があるにも関わらず忘れられている再生可能なエネルギーがあります。それは、バイオガスです。この日本が忘れている再生可能なエネルギーがスウェーデンでは大きく成長してきています。今回は、その動向についてご紹介します。

 

バイオガスとは?

バイオガスは、家畜の糞尿、植物、生ゴミなどが、嫌気性消化(酸欠状態で生分解される)によって生成されるガスのことです。ガスは、主にメタンガスと二酸化炭素で構成されています。バイオガスの生産は、発酵タンクで微生物を使って行われます。バイオガスを取り出すと消化液が残ります。消化液は、原料に最初から含まれていた燐やミネラルがバイオガス生産後も残るので肥料として使われています。

 


(写真提供: バイオガスポーターレン)

 

スウェーデンでのバイオガス生産と用途

原料は?

スウェーデンでは、長年、バイオガスの開発に力をいれてきました。バイオガスの商業化、車両燃料として使うことに関しては、世界の最先端をいっています。2010年に229箇所のバイオガス生産施設があり、1.4TW/時/年のエネルギーを生産しています。原料としては、下記のようなものが使われています。

  • 生ゴミ
  • 家畜の糞尿
  • 下水処理場の汚泥
  • 穀類
  • 農産物の収穫後の残渣
  • 食品加工メーカーの有機廃棄物
  • 紙・パルプ生産工場の有機廃棄物


(写真提供: バイオガスポーターレン)

 

どのようなバイオガス生産施設があるのか?

全国に229あるバイオガス生産施設のうち、44%が下水処理場の汚泥を原料にした施設です。次に多いのが、生ゴミや家畜の糞尿や食品加工メーカーの有機廃棄物などを混合して使っている施設で、25%を占めます。3番目は、生ゴミを含むゴミ埋め立て地からバイオガスを生産する施設で22%を占めます。バイオガスの年間総生産量は、50,000kw/時になります。施設の規模は、生産量が100kw/時のように農家で生産する小規模なものから30,000kw/時という大規模なものもあります。また、小麦からエタノールを生産する時に出る副産物をバイオガスの原料にした施設もあります。その他、メタンガスを浄化して自動車の燃料にする施設もあり、その技術は世界の最先端です。また、スウェーデン南部の7箇所の施設では、メタンガスを浄化して、天然ガスのパイプラインに送っています。


ストックホルムの下水処理場にあるバイオガス生産施設 


農場の側にあるバイオガス生産施設(提供: ハンマービーショースタッド環境情報センター)

 


図1:バイオガス生産の内訳(提供: バイオガスポーターレン)

 

バイオガスは、地産地消のエネルギーとして優等生

バイオガスは、大量生産できません。なぜなら、原料の生ゴミや有機廃棄物の量は限られているからです。しかし、化石燃料のように枯渇しません。人間が住んでいる場所では下水処理場の汚泥や生ゴミは必ず発生しますし、人間が生きている間、再生される原料です。家畜の糞尿は、そのままにして農場に置いておくとメタンガスが発生し、地球温暖化の問題になりますが、バイオガスにすると化石燃料の代替として使え、地球温暖化の防止策になります。また、糞尿が雨で流れ、川や海の富栄養化の原因になることを避けることができます。生ゴミも、下水処理場の汚泥も、嫌がられるゴミ問題となっていますが、それらをエネルギー源として活用することでゴミ問題と地球温暖化の問題の二つの環境問題の解決につながるというメリットがあります。その上、バイオガスを車両燃料として使うと排気ガスからのエミッションが非常に少ないのです。バイオガスは、遠出する車両には適しませんが、市バスや、タクシー、ゴミ回収車など市内を走る車両には最適の燃料となります。バイオガスは、住宅やレストランのガスレンジや暖房にも使えます。このように、地産地消のエネルギーとして優等生と言えます。

 


図2:バイオガス循環の全体像(提供: バイオガスポーターレン)

  • 家畜、生ゴミ、トイレ
  • バイオガス生産施設
  • 消化液が農家の肥料に
  • 住宅の暖房、車の燃料


バイオガスレンジ


ストックホルム市のバイオガスバス
(提供: ハンマービーショースタッド環境情報センター)

 


図3: バイオガス使用用途の内訳(提供: バイオガスポーターレン)

 

ストックホルムの事例

ストックホルムには3ヶ所の下水処理場に汚泥を原料にするバイオガスの生産とバイオガスを浄化する設備があります。ヘンリクスダール下水処理場では、一部のバイオガスが近隣アパート1000所帯と、レストランのキッチン用ガスとして使われています。また、ストックホルム市の中心街に130台のバイオガスバスが走っています。近年、バイオガスで走るタクシーや乗用車も増え、昨年はバイオガス不足が問題になりました。その後、生産量が増えていますが、需要に追い付いていない状況です。

現在、50のバイオガス生産プロジェクトが計画されています。それを基にすると、2013年には、3TW/時/年の生産量が予測されます。また、将来は木質バイオマスからバイオガスを生産し、生産量を大幅に増やすことも考えられています。このように、スウェーデンのバイオガス生産は、地方の農業活性化と雇用につながり、地球温暖化対策にもなるというメリットがあるため、地方自治体のバイオガスプラントの建築に国から補助金を支給しています。それが上の図のように、バイオガス生産量が右肩上がりに成長すると言う結果につながっています。


図4: バイオガス生産の予想(提供: バイオガスポーターレン)

 

日本にも可能性は充分ある

火力発電や原子力発電のような集中型のエネルギー供給の時代は終わったと思います。これからは、自治体や、街、集落ができるだけエネルギーを自給自足できる、小規模でも安全で、多様なエネルギーシステムが求められていきます。バイオガスを総人口900万人のスウェーデンでこれだけ生産できるのですから、人口12倍の日本では、もっと可能性があります。また、すでに都市ガスのインフラがあり、天然ガスでバスやトラックが走っている日本では、バイオガスに切り替えるのはたやすいはずです。必要なのは、政治界と産業界のトップの思考転換とやる気だけです。

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